映画保存協会

映画保存協会[http://www.filmpres.org/]が主催する「2005年度 第3回FPS勉強会 ホームムービーの日について考える日」を訪れる。
1950〜80年代にかけて撮影された8ミリフィルム作品、8本(うち1本はテレシネ/DVD)が上映された。カタカタカタという映写機の音を聞きながら8ミリを見たのは何年ぶりのことだろう。映画保存協会が取り組む「映画フィルムを文化財として保存する活動」には以前から興味を持っていた。特に一般家庭で撮影されたプライベートな内容のフィルムに映された風俗は、そのフィルム唯一のもので、他にはどこにも記録されていないものだ。急速に失われつつある8ミリ、16ミリのホームムービーの上映と保存の必要性を訴える姿勢にはとても共感する。
今日見た作品の中で興味深かったのは『東京タワー』という3分のモノクロ8ミリフィルム。撮影されたのは東京タワーが建設された1958年の翌年。撮影者の家族と親戚が東京タワーを訪れた様子が映っている。東京タワー近辺は今よりも自然がいっぱい、という感じだ。いちばん驚いた映像は「階段を上るたくさんの人たち」。フィルムの所有者によれば、あまりの人出の多さに、エレベーターを利用する列に並ぶことを諦めて展望台まで階段を上った人がたくさんいたという。階段を上ったところから撮影されたと想像できる俯瞰のカットには、エレベーターに乗るために並ぶ人たちの長蛇の列が映っていた。
他の8ミリフィルムにも1950〜60年代の風俗が記録されていて、そこに登場する人たちのファッションや髪型などを見ると、例えば同時期が舞台のテレビドラマ『菊次郎とさき』の考証・風俗描写がいかに現実と懸け離れてるかがよくわかる。40〜50年前でも市井の人々の風俗を調べて再現するのは意外と難しいことなのだ。
古本屋として出張買取に行くと、遺品整理の現場に立ち会うことがあるが、こうしたホームムービーの掘り起こしにも一役かえたらいいなあ、と思うのであった。それにしても思いつくのはお金にならないことばかりなり。

上映会場から徒歩5分、小宮山書店のガレージセールへ寄る。日曜日に来たのははじめて。
山下洋輔『へらさけ犯科帳』(晶文社)、篠田正浩エイゼンシュテイン』(岩波書店)、アドラン・トリノン『現代のシネマ6 ワイダ』(三一書房)、加藤謙一少年倶楽部時代』(講談社)、小沢昭一『雑談・にっぽん色里誌』(講談社)/『私は河原乞食・考』(三一書房)。3冊500円、6冊だから1,000円。