帝釈天でう○○

 不思議だ。「う○○」と書いて、前に「帝釈天」とくれば、そこには「うぶゆ(産湯)」という言葉が入るはず。映画『男はつらいよ』の主題歌の台詞、「わたくし生まれも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯をつかい‥‥」を思い出すわけだが、「う○○」と文字で書くと、違う文字が入ってきてしまう。頭に「う」のつく3文字の単語を漠然と思い浮かべたとしたらそうはならないと思うのだが、穴埋めだとほとんどの人があの言葉を思い浮かべるだろう。まあ、どうでもいいことだけど。
 さて、今日は父の友人宅まで出張買取。場所は映画『男はつらいよ』の舞台でおなじみ、葛飾柴又。内容は詳しく聞いていなかったが、父の友人だということと、本を収納するための物置きを庭につくってある、ということなので、とりあえずでかけることに。すでに残す本と処分する本を別けてあって、処分すると決めた本からは欲しいものを選んでいいということになった。主に美術展の図録など。あまりこだわらずに適当に見た展覧会の図録だといい、奥様も「いい本なんかないのよ」とおっしゃっていたが、全くの謙遜で、ユトリロクリムトエゴン・シーレ、フジタ、香月泰男国吉康雄中原淳一など、近現代美術へのこだわりを感じるコレクションだった。岩波文庫講談社学術文庫などとあわせて200冊程選ばせていただく。
 買い取って帰ろうとすると「お金はいらない」と言われた上に、「お土産に」と柴又のお煎餅を持たされる。友人の息子ということで気をつかっているみたいだ。さらに帝釈天を案内していただき、参道のうなぎ屋でうな重をごちそうになる。なんだか申し訳ないが若輩者が遠慮ばかりではかえって失礼なので、ご好意をうける。柴又駅前では「車寅次郎の像」もちらっと見ることができて、『男はつらいよ』ファンの古本屋としては最高のひととき。
 帝釈天と参道付近は映画そのままのとてもいい雰囲気だ。渥美清倍賞千恵子がひょっこり顔を出しそうな感じ‥‥、これはない。しかし、帝釈天の山門を見ると笠智衆が出てきそうな感じ‥‥、これはある。笠智衆演じる御前様がいかにリアルだったか、今にして改めて感心させられた。恐るべし、笠智衆
 200冊を車に積んで、そのうち半分は途中ブックオフへ売り、教養文庫を2冊購入して帰宅。
 お金を受け取らないうえにうな重とお煎餅までごちそうになったままというわけにはいかないので、すぐに買取り金額相応のギフトを贈る。明日には着くかな。
 というわけで、「帝釈天でうなぎ」でした。